性格の悪さ、才能です。──ボードゲーム『ALIEN G(エイリアンG)』レビュー
「人が嫌がることを、進んでやれ。」
このキャッチコピーを見て、嫌な予感がした人は正しい。
だが、このゲームが試しているのは人格ではない。
戦略としての“性格の悪さ”だ。
ゲーム概要
- ゲーム名:ALIEN G(エイリアンG)
- プレイ人数:2人 / 4人(4人時はチーム戦)
- 勝利条件:ゲーム終了時、最も得点が高いプレイヤー
- 特徴:押し付け合い・心理戦・逆転得点
基本ルールと流れ
ゲームは3×3のボードを使って行われる。
各手番、プレイヤーは山札からタイルを1枚引き、
自分の正面にある3列のうち1列を選び、手前から押し込む。
すると、ところてん方式で反対側からタイルが1枚押し出される。
押し出されたタイルは、列の正面にいるプレイヤーの手元に置かれる。
つまり、相手にタイルを送りつけるゲームだ。
この手順を繰り返し、各プレイヤーの手元に8枚のタイルが揃ったらゲーム終了。
このゲーム最大の特徴:得点のねじれ
ALIEN Gでは、
自分が集めたタイルは自分の得点にならない。
得点になるのは、
自分の正面にいるプレイヤーが持っているタイルだ。
つまり、自分が押し出して相手に送り込んだタイルこそが、
自分の得点源になる。
相手の手元は、あなたの得点置き場。
相手をどうコントロールするかが勝敗を分ける。
セットコレクションと嫌がらせ
タイルはセットコレクション方式で得点化される。
- 特定の枚数で高得点
- 中途半端な枚数は0点
- 王冠や卵アイコンによるボーナス得点
「あと1枚で高得点になる」
「このままだと0点になる」
そうした状況がすべて公開情報で進行するため、
狙い撃ちの妨害が成立する。
感想
なぜGなのか。
なぜ、よりによってGなのか。
G。
それはゴキブリ。
黒い悪魔。
人類が団結できる、数少ない共通認識。
この世界に宗教や文化の違いはあっても、
「Gが出たら悲鳴をあげる」という点だけは、
驚くほど一致している。
だからこそ、もう一度問いたい。
なぜGなのか。
例えばPならどうだろう。
P=ピッグ。
紅い豚。
格好いい。
ロマンもある。
だが、どこか別の物語が始まってしまう。
違う。
このゲームに必要なのはロマンではない。
嫌悪だ。
ところが、このG。
憎むべき存在のはずのGが、
どういうわけか――
可愛い。
目がある。
丸い。
ポップだ。
このデザインを作った人間は、
間違いなくGを観察し、
そして、理解し、
最後には――
愛してしまった人だ。
嫌われ者を、
ここまで無防備な姿に描けるのは、
愛情以外に説明がつかない。
このゲームは、
最初から最後まで、
隠し事ができない。
盤面は見えている。
相手の手元も見えている。
そして、
自分が何を狙っているのかも、
驚くほど見えている。
「それ、集めてるよね?」
無言の視線が突き刺さる。
もし相手が善人なら、
道は開ける。
だが、ここに集まっているのは、
勝ちたい人間だ。
善意はない。
あるのは、
計算された悪意だけだ。
このゲームの残酷さは、
たった8枚という制限に凝縮されている。
8枚。
やり直しが効くには、
あまりにも少ない。
「途中で方針を変えよう」
そう思った瞬間、
もう枠が埋まり始めている。
積み上げた計算は、
一手の邪魔で崩れ落ちる。
頼むから、
そのタイルを送らないでくれ。
そう願うほどに、
相手はそれを送ってくる。
なぜなら――
それが正解手だからだ。
これは協力ゲームではない。
対戦ゲームだ。
そして、
遠慮した者から脱落する。
勝ちたいなら、
性格の悪さを隠すな。
むしろ、
磨け。
相手が嫌がる未来を想像し、
それを、
最短距離で現実にする。
ALIEN Gは、
可愛い顔でそれを要求してくる。
ゲームが終わったあと、
盤面には何も残らない。
だが、
心には確実に何かが残る。
「やられた」
「してやった」
「次はこうしてやる」
この感情こそが、
ALIEN Gの正体だ。
黒い悪魔は、
外にいるのではない。
テーブルの向こう側にいる。
そして、
それは――
あなた自身かもしれない。

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