カテゴリー: ボードゲームレビュー

ボードゲームの遊び方やルール、体験レビューを紹介するカテゴリーです。家族や友人と楽しめる作品から、じっくり考える戦略ゲームまで、様々なボードゲームの魅力を伝えます。

  • 協力して役を作るのに、全員は勝てない。サーフォサウルス MAX 感想&ルール解説

    協力して役を作るのに、全員は勝てない。サーフォサウルス MAX 感想&ルール解説

    協力して、報われない。――サーフォサウルス MAX レビュー&ルール解説

    全員でポーカーの役を作れ。
    そう聞くと、協力ゲームだと思うかもしれない。

    だが、このゲームは違う。
    協力はするが、救われるとは限らない。

    『サーフォサウルス MAX(Surfosaurus MAX)』は、
    恐竜がサーフィンをするという、あまりにも軽快な見た目とは裏腹に、
    静かで、鋭く、そして残酷な判断を迫ってくるカードゲームだ。


    どんなゲーム?

    本作はいわゆる「変則ポーカー」。
    ただし、役を作るのは一人ではない。

    プレイヤー全員で、場に出たカードを使い、ひとつのポーカー役を完成させる。
    フラッシュか、スリーカードか。
    役の完成そのものは、全員共通だ。

    だが――
    得点できるかどうかは、まったく別の話になる。


    基本ルール

    ● 手番にやること

    • 手札からカードを1枚、場に出す
    • 山札からカードを1枚補充する

    これを繰り返し、
    全員が2枚ずつカードを出した時点でラウンド終了。
    そこで得点計算に入る。

    ● 役の判定(協力パート)

    場に出たすべてのカードを見て、
    「今、この場で作れる一番強いポーカー役」を判定する。

    重要なのは、
    誰の役か、ではなく「場の役」だという点だ。


    得点ルール ― このゲームの核心

    役が決まったあと、
    得点できるのは次の条件を満たしたプレイヤーだけ。

    • 自分のカードが、その役を構成している
    • その中で、数字が大きい上位4枚に入っている

    この瞬間、
    同じ役を見ていたはずのプレイヤーたちは、
    はっきりと分断される。


    数字と得点が反転するジレンマ

    このゲームをただのポーカーで終わらせないのが、
    数字と得点の逆転関係だ。

    数字が大きいカードは、残りやすい。
    得点化しやすく、安定している。
    だが、点数は低い。

    数字が小さいカードは、得点が高い。
    刺されば一撃必殺。
    だが、役が完成した瞬間、真っ先に弾かれる可能性が高い。

    安定か。
    一発逆転か。

    その選択を、
    全員が同じ場を見ながら、同時に迫られる。


    感想:協力の意味が、最後に反転する

    全員でポーカーの役を作れ。
    そう言われれば、協力ゲームに見える。

    だが、これは協力ではない。

    役は完成させなければならない。
    なぜなら、役が完成しなければ、
    全員がゼロ点だからだ。

    だから協力する。
    いや、正確には――
    協力せざるを得ない。

    ここにある読み合いは、
    相手を貶めるためのものではない。
    役を成立させるための読み合いだ。

    誰かが流れを作り、
    誰かがそれに乗り、
    それでも、全員が報われるわけではない。

    役が完成した、その瞬間。
    協力は、意味を変える。

    同じ波を作ったはずなのに、
    その波に乗れる者と、
    弾き飛ばされる者に分かれる。

    このゲームにおける協力は、
    勝つための協力ではない。

    舞台を整えるための協力。
    その舞台の上で、
    最後に光を浴びるのは、ほんの一部だ。

    静かで、鋭く、そして強烈に記憶に残る。
    そんな一作である。


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  • 沈黙に寄り添うガム。話題提供カードゲーム『ガムトーク』の話

    沈黙に寄り添うガム。話題提供カードゲーム『ガムトーク』の話

    沈黙にガムを噛ませろ。話題提供カードゲーム『ガムトーク』レビュー

    会話が止まったとき、人はだいたいスマホを見る。
    けれど、このガムがあれば、少し違う未来がある。

    今回紹介するのは、ガムのパッケージにそっくりな話題提供カードゲーム
    『ガムトーク』

    動画では、このゲームを実際に使用しながら、投稿者がエピソードトークを披露。
    「ゲーム」という言葉から想像する勝ち負けや戦略とは、少し違う位置にある作品だ。


    ガムトークとは?

    • 商品名:ガムトーク
    • 見た目:ガム箱そっくりのパッケージ/板ガムサイズのカード
    • コンセプト:勝敗のない、話題提供ツール

    箱に書かれたキャッチコピーは、
    「サラバ沈黙 ヨウコソ話題」

    この言葉通り、ガムトークは「沈黙を埋める」ための道具だ。
    ただし、力づくでではない。


    ルールはとてもシンプル

    箱からカードの束を取り出し、軽くシャッフルする。

    カードの表面には①〜⑥の番号とトークテーマが書かれている。

    (例:スーパーマーケットの話/シャンプーの話/職務質問された話 など)

    1. 山札の一番上を1枚めくり、場に置く
    2. 山札の裏側に書かれた数字(①〜⑥)を確認
    3. 該当する番号のテーマについて話す

    本来のルールでは、話し終えたあとに
    「いい話や」と肯定するのがセットになっている。
    この一言が、場の空気をやわらかくする。


    動画内の実演エピソード

    動画では、実際にカードを引いてトークを実演。
    引かれたテーマは 「② 目の話」

    語られたのは、投稿者がボードゲーマーだった頃のエピソード。
    元カノと名作ボードゲーム
    『AZUL(アズール)』 を遊んだときの話だ。

    盤面を見つめ、戦略を練る投稿者。
    結果は初心者だった元カノの勝利。

    しかし返ってきたのは、
    「私の目、全然見てないよね?」
    という言葉。

    ボードゲームは盤面を見るもの。
    映画はスクリーンを見るもの。
    それでも彼女にとって大事だったのは、
    「目を見つめ合うこと」だった。

    そんな価値観のズレを、笑いと自虐を交えて語る。
    ガムトークがあるからこそ、
    自然に引き出されたエピソードだった。


    感想:このガムトークという道具について

    このガムトークは、ゲームというよりも
    コミュニケーションツールに近い存在だと思った。

    勝ち負けもなく、上手い下手もない。
    だからこそ、ルールはきっちり守るものではなく、
    その場に合わせて、臨機応変でいい。

    大切なのは、話すことを「正解」にしないことだ。

    沈黙が怖くて用意したゲームが、
    いつの間にか誰かにとっての負担になってしまう。
    そんな展開も、残念だけれど起こり得る。

    特にこのゲームが出てくるのは、
    人が集まった瞬間、空気がまだ固まりきっていないタイミング。
    つまり、断りにくい瞬間でもある。

    だからこそ、始める前に、ほんの一言があってほしい。

    「話せなかったら、テーマを何回変えてもいいよ」
    「無理に話さなくても、聞いてくれているだけで大丈夫だよ」

    その一言があるだけで、
    このゲームは“沈黙を壊す道具”ではなく、
    “沈黙に寄り添う道具”になる。

    話してもいい。
    話さなくてもいい。

    ただ、そこに一緒にいるためのきっかけとして。
    このガムトークは、
    そんな使われ方が一番似合っている気がした。


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  • 可愛い顔した、知性の消耗戦。 『エージェント・アベニュー』という名の心理追跡劇

    可愛い顔した、知性の消耗戦。 『エージェント・アベニュー』という名の心理追跡劇

    2025年最強2人用心理戦ボードゲーム『エージェント・アベニュー (Agent Avenue)』完全解説

    今年プレイしたボードゲームの中で、私が「圧倒的に面白かった」と断言できる作品があります。
    それが『エージェント・アベニュー (Agent Avenue)』です。
    もしあなたがボードゲームを1つだけ買うとしたら、間違いなくこれをおすすめします。


    ゲーム概要

    プレイ人数:2人用

    ジャンル:心理戦、すごろく、セットコレクション

    テーマ:スパイ同士の追いかけっこ。相手の動きを読みつつ、自分のゴールを目指す。

    勝利条件:

    • 相手のコマを捕まえる(追い抜く位置や同じマスに移動)
    • 特定カード効果(暗号解読者)で即勝利
    • 相手が特定カード効果(命知らず)で自滅する

    ゲームの核心:心理戦と手札のジレンマ

    このゲーム最大の特徴は、「ケーキの切り分け問題(I cut, you choose)」と
    「手持ち枚数によるカード効果変化」を組み合わせた心理戦です。

    手番の流れ(交互に進める)

    カード選択
    手札(常に4枚)から2枚を選ぶ。1枚は表向き(オープン)、もう1枚は裏向き(クローズ)で提示。

    カード受け取り
    相手がどちらか1枚を選ぶ。選ばれなかった方は手番プレイヤーが獲得。

    移動
    獲得したカードの効果に従い、コマを進める。

    補充
    山札からカードを引き、常に手札4枚に。


    移動力の決定方法

    カードは色(種類)ごとに並べます。
    同じ種類の枚数によって、進むマスが変化します。

    • 1枚目:カードの一番上の数字分進む
    • 2枚目:真ん中の数字分進む
    • 3枚目:一番下の数字分進む

    つまり、相手にとってはゴミカードでも、
    自分が取れば一気に加速する「神カード」に変わることがあります。


    特殊カードの例

    二重スパイ(キツネ)
    1枚目:-1(下がる)
    2枚目:6(爆走)
    3枚目:-1
    → 相手に2枚目を渡すと逃げ切られるジレンマ。

    命知らず(オオカミ/犬)
    3枚目:「×」で即敗北

    暗号解読者(フクロウ)
    3枚目:「チェックマーク」で即勝利


    究極の心理戦の一例

    動画では投稿者が、表のリスと裏の謎カードで脳内葛藤を実演しています。

    • 表のリス:2枚目なら2マス進める、有利
    • 裏のカードがキツネなら、相手に渡すと6マス進む
    • 命知らずだったら、自分が取ると即敗北
    • 暗号解読者だったら、相手に渡すと即勝利

    結論:相手に何を押し付け、自分は何を取るか、
    カードカウンティングと読み合いが毎ターン発生します。


    感想

    追いかけっこ。
    童心に帰って?
    いや……帰らない。

    そこにあるのは、
    無邪気さではなく、疑念だ。
    笑顔の裏で計算が走り、
    一歩進むたびに、誰かの思惑が崩れていく。

    謀略が渦巻く、
    大人の追いかけっこ。
    それが――
    『エージェント・アベニュー』。

    街中を走り回るスタミナはいらない。
    息を切らすのは足ではなく、脳だ。
    必要なのは、知のスタミナ。
    相手の裏を読む力、
    そして
    「読まれているかもしれない」と
    疑い続ける胆力。

    相手の目を見るな。
    読まれるぞ。

    沈黙も、ためらいも、
    視線の揺れすら、すべてが情報になる。
    ここでは一瞬の迷いが、
    勝利にも、
    破滅にも、
    直結する。

    このゲームでは、
    追っているつもりが、
    いつの間にか追われている。
    逃げ切ったと思った瞬間、
    背後に気配を感じる。
    その逆も、また然り。
    立場は静かに、
    だが確実に反転する。

    カードを差し出す。
    表と裏。
    選ばせているようで、
    選ばされている。

    相手に渡した一枚が、
    次の瞬間、
    自分の首を絞める刃になることもある。

    そして――
    手に入れた、その瞬間。
    条件が揃えば、
    距離も、理屈も、
    すべてを無視して。

    即、勝利。
    あるいは、
    即、敗北。

    そんなカードが、
    確かに、ここには存在する。

    心理 VS 心理。
    読み合い VS 読み合い。
    この勝負に、情けはない。

    ゲームを終えたあと、
    盤面は静まり返っているのに、
    頭の中だけが、まだ走り続けている。
    まるで世界を駆け抜けた後のような爽快感と、
    遅れてやってくる、深い息切れ。

    これは、
    可愛い見た目をした、知性の消耗戦だ。
    そして間違いなく、
    2人用ボードゲームという枠を超えた、
    心理の追いかけっこである。


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  • なぜGなのか。──ボードゲーム『ALIEN G』が暴く、性格の悪さという才能

    なぜGなのか。──ボードゲーム『ALIEN G』が暴く、性格の悪さという才能

    性格の悪さ、才能です。──ボードゲーム『ALIEN G(エイリアンG)』レビュー

    「人が嫌がることを、進んでやれ。」
    このキャッチコピーを見て、嫌な予感がした人は正しい。

    だが、このゲームが試しているのは人格ではない。
    戦略としての“性格の悪さ”だ。

    ゲーム概要

    • ゲーム名:ALIEN G(エイリアンG)
    • プレイ人数:2人 / 4人(4人時はチーム戦)
    • 勝利条件:ゲーム終了時、最も得点が高いプレイヤー
    • 特徴:押し付け合い・心理戦・逆転得点

    基本ルールと流れ

    ゲームは3×3のボードを使って行われる。
    各手番、プレイヤーは山札からタイルを1枚引き、
    自分の正面にある3列のうち1列を選び、手前から押し込む。

    すると、ところてん方式で反対側からタイルが1枚押し出される。

    押し出されたタイルは、列の正面にいるプレイヤーの手元に置かれる。
    つまり、相手にタイルを送りつけるゲームだ。

    この手順を繰り返し、各プレイヤーの手元に8枚のタイルが揃ったらゲーム終了。

    このゲーム最大の特徴:得点のねじれ

    ALIEN Gでは、
    自分が集めたタイルは自分の得点にならない。

    得点になるのは、
    自分の正面にいるプレイヤーが持っているタイルだ。

    つまり、自分が押し出して相手に送り込んだタイルこそが、
    自分の得点源になる。

    相手の手元は、あなたの得点置き場。
    相手をどうコントロールするかが勝敗を分ける。

    セットコレクションと嫌がらせ

    タイルはセットコレクション方式で得点化される。

    • 特定の枚数で高得点
    • 中途半端な枚数は0点
    • 王冠や卵アイコンによるボーナス得点

    「あと1枚で高得点になる」
    「このままだと0点になる」

    そうした状況がすべて公開情報で進行するため、
    狙い撃ちの妨害が成立する。

    感想

    なぜGなのか。
    なぜ、よりによってGなのか。

    G。
    それはゴキブリ。
    黒い悪魔。
    人類が団結できる、数少ない共通認識。

    この世界に宗教や文化の違いはあっても、
    「Gが出たら悲鳴をあげる」という点だけは、
    驚くほど一致している。

    だからこそ、もう一度問いたい。
    なぜGなのか。

    例えばPならどうだろう。
    P=ピッグ。
    紅い豚。
    格好いい。
    ロマンもある。
    だが、どこか別の物語が始まってしまう。

    違う。
    このゲームに必要なのはロマンではない。
    嫌悪だ。

    ところが、このG。
    憎むべき存在のはずのGが、
    どういうわけか――
    可愛い。

    目がある。
    丸い。
    ポップだ。

    このデザインを作った人間は、
    間違いなくGを観察し、
    そして、理解し、
    最後には――
    愛してしまった人だ。

    嫌われ者を、
    ここまで無防備な姿に描けるのは、
    愛情以外に説明がつかない。

    このゲームは、
    最初から最後まで、
    隠し事ができない。

    盤面は見えている。
    相手の手元も見えている。
    そして、
    自分が何を狙っているのかも、
    驚くほど見えている。

    「それ、集めてるよね?」
    無言の視線が突き刺さる。

    もし相手が善人なら、
    道は開ける。
    だが、ここに集まっているのは、
    勝ちたい人間だ。

    善意はない。
    あるのは、
    計算された悪意だけだ。

    このゲームの残酷さは、
    たった8枚という制限に凝縮されている。

    8枚。
    やり直しが効くには、
    あまりにも少ない。

    「途中で方針を変えよう」
    そう思った瞬間、
    もう枠が埋まり始めている。

    積み上げた計算は、
    一手の邪魔で崩れ落ちる。

    頼むから、
    そのタイルを送らないでくれ。

    そう願うほどに、
    相手はそれを送ってくる。

    なぜなら――
    それが正解手だからだ。

    これは協力ゲームではない。
    対戦ゲームだ。
    そして、
    遠慮した者から脱落する。

    勝ちたいなら、
    性格の悪さを隠すな。
    むしろ、
    磨け。

    相手が嫌がる未来を想像し、
    それを、
    最短距離で現実にする。

    ALIEN Gは、
    可愛い顔でそれを要求してくる。

    ゲームが終わったあと、
    盤面には何も残らない。
    だが、
    心には確実に何かが残る。

    「やられた」
    「してやった」
    「次はこうしてやる」

    この感情こそが、
    ALIEN Gの正体だ。

    黒い悪魔は、
    外にいるのではない。
    テーブルの向こう側にいる。

    そして、
    それは――
    あなた自身かもしれない。

    プレイ動画

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  • 人は、何を覚えて生きているのか 『ザッツ・ノット・ア・ハット』感想・レビュー

    人は、何を覚えて生きているのか 『ザッツ・ノット・ア・ハット』感想・レビュー


    記憶を信じるな、笑え|『That’s Not A Hat(ザッツ・ノット・ア・ハット)』レビュー

    The Game GalleryのHAL99さんによるレビュー動画をもとに、
    ボードゲーム『That’s Not A Hat(ザッツ・ノット・ア・ハット)』の魅力をまとめました。

    記憶力×ブラフというシンプルな構造ながら、
    遊んだあとに不思議な余韻を残す、非常に完成度の高いパーティーゲームです。

    動画の概要・要約

    カードには、靴・カラーコーン・ステッキ・ハムサンドなど、
    子供が描いたような、極めてシンプルで緩いイラストが描かれています。

    ゲームは「プレゼント(カード)」を隣へ渡していくだけ。
    ただし、そのカードが何だったかを覚えていなければならないという制約があります。

    最初は覚えているつもりでも、カードが裏向きで行き交ううちに記憶は曖昧になり、
    自信満々の嘘、本当のことなのに疑われる宣言が飛び交う、混沌とした展開に。

    HAL99さんも
    「人間は思ったより覚えられない」
    「しかも、みんな覚えていない」
    という状況そのものが、とにかく笑えると高く評価しています。

    ゲームの流れ(簡易まとめ)

    • 各プレイヤーの前にカードを1枚、表向きで置いて全員で確認・記憶
    • 山札からカードを引き、絵柄を宣言して裏向きで隣のプレイヤーへ渡す
    • 受け取った側は「信じて受け取る」か「チャレンジする」かを選択
    • チャレンジ結果に応じて、宣言者か疑った側がペナルティ
    • 規定枚数のペナルティカードでゲーム終了

    感想

    人は、何を覚えて、何を忘れるのか。
    そんな問いを、こんなにも軽やかに、
    こんなにも残酷に突きつけてくるゲームがある。
    『ザッツ・ノット・ア・ハット』だ。

    記憶力ゲーム、と聞いて身構える必要はない。
    このゲームは、努力を裏切る。
    なぜなら、覚える対象そのものが、
    驚くほど、覚えにくい。

    カードに描かれているのは、
    靴、カラーコーン、ステッキ、ハムサンド。
    どれも見たことがある。
    どれも説明できる。
    だが、どれも心に引っかからない。

    特徴がない。
    物語がない。
    感情が乗らない。

    つまり――
    記憶に残る理由が、どこにもない。

    そして、このゲームは言う。
    「さあ、覚えろ」と。

    当然のように、忘れる。
    信じられないほど、簡単に。
    一手、二手、三手。
    たったそれだけで、
    さっきまで確かにあったはずの記憶は、
    霧のように消えていく。

    気づけば、ゲームよりも先に、
    自分自身への不安が立ち上がる。

    「こんなに覚えられなかったっけ?」
    「私、こんなに曖昧だったか?」

    ここからが、このゲームの本番だ。

    相手がカードを差し出し、宣言する。
    「これは〇〇です。」

    それは、ブラフなのか。
    ――いや、本当にブラフなのか?
    もしかすると、相手もまた、
    自分と同じ深淵を覗いているだけなのではないか。

    嘘をついているのか。
    忘れているだけなのか。
    その違いを、誰も証明できない。

    確かなのは、
    自分も、覚えていないという事実だけだ。

    やっていることは、ただひとつ。
    カードを覚える。
    それだけだ。

    ルールは簡単。
    説明は一瞬。
    なのに、思考は混乱し、判断は揺らぐ。

    このゲームは、
    「記憶力」を試しているのではない。
    記憶に頼ろうとする、人間の危うさを暴いている。

    そして、もうひとつ。
    このゲームが決定的に優しい点がある。

    カードを渡す相手は、
    矢印によって、機械的に決められている。

    誰かを狙う必要はない。
    誰かに狙われていると感じる必要もない。
    ここには、悪意の居場所がない。

    あるのは、
    システムに翻弄される、平等な人間だけだ。

    だからこそ、
    このゲームは痛くない。
    苦しくない。
    ただ、笑える。

    忘れることも、疑うことも、
    信じてしまうことも、
    すべてが自分の内側で完結する。

    『ザッツ・ノット・ア・ハット』は、
    勝敗を競うゲームではない。

    これは、
    「人は、何を覚えて生きているのか」
    その輪郭を、
    ぼんやりと、しかし確かに浮かび上がらせる装置だ。

    遊び終わったあと、
    ペナルティカードの枚数よりも先に、
    ひとつの感覚が残る。

    ――覚えていると思っていたものほど、
     実は、いちばん脆かったのだと。

    笑いながら、
    少しだけ、自分を疑う。

    それが、
    『ザッツ・ノット・ア・ハット』という体験なのだ。

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  • 裏切りはマナーです 『ジャックたちと豆の木レース』レビュー

    裏切りはマナーです 『ジャックたちと豆の木レース』レビュー


    協力か、裏切りか。燃やすか、乗るか。
    童話ボードゲーム『ジャックたちと豆の木レース』徹底解説

    童話『ジャックと豆の木』。
    豆を植え、木を伸ばし、雲の上の宝を目指す――
    そんなロマンあふれる物語が、疑心暗鬼と破壊に満ちたレースゲームになったとしたら?

    それが今回紹介する
    『ジャックたちと豆の木レース』です。

    このゲーム、見た目は童話。
    中身は――
    協力と裏切りが常に隣り合わせの、ハラハラ系レースゲーム。

    🎥 動画の内容要約

    プレイヤーはそれぞれ「豆」からスタートし、
    カードを使って豆の木を伸ばし、雲の上を目指します。

    • 他人の木に相乗りして楽をする
    • わざと変な方向に伸ばして進路を妨害する
    • 斧で切る
    • たいまつで燃やす

    ――そう、直接攻撃ありです。

    「みんなで繋げば早い」
    「でも、誰か一人の裏切りで全てが崩れる」

    この協力するほど危険になる構造こそが、
    本作最大の魅力です。

    📖 ルール解説

    1. ゲームの目的

    豆の木を伸ばして雲の上に到達し、宝(得点)を集めること。
    最終的に、もっとも多くの得点を獲得したプレイヤーが勝者となります。

    2. 手番でやること

    • カードを1枚出す
    • もしくはパスする

    たったこれだけ。
    だからこそ、1枚の選択が重い。

    3. カードの種類と効果

    🌿 木カード(移動・配置)

    • 数字(1〜3)の分だけコマを進める
    • 他人の木につなげて配置可能

    🛠 アイテムカード(特殊効果)

    • 🪓 オノ:木カードを1枚破壊
    • 🚿 ジョウロ:連続配置+たいまつ防御
    • 🔥 たいまつ:豆からつながる全ての木を焼却

    4. 雲の上への到達(イベント)

    • 🐥 鶏(金の卵):3点獲得
    • 🎻 ハープ:5点獲得&即終了
    • 👹 巨人:悪夢の始まり

    5. 巨人が出たらどうなる?

    巨人とつながっている木の上にいるプレイヤーは、
    全員スタート(豆)へ逆戻り。

    さらに、つながりを切れなければ脱落。
    協力の道は、一瞬で全員を巻き込む罠になります。

    6. 得点計算(ボーナス)

    宝(雲)から豆(地面)まで道がつながっているプレイヤーは、
    🕊 青い鳥の数だけ追加得点を獲得します。

    感想

    ジャックと豆の木。
    誰もが知っている、あまりにも有名な童話だ。

    豆を植え、
    木を伸ばし、
    雲の上の宝を目指す――
    本来なら、夢と冒険の物語のはずだった。

    だが、このゲームはこう名乗る。
    『ジャックたちと豆の木レース』。

    ……たち?
    誰だ、その「たち」は。

    考えるまでもない。
    全員がジャックなのだ。

    このテーブルに座った瞬間から、
    あなたもジャック。
    わたしもジャック。
    隣にいるその人も、もちろんジャック。

    ここは物語の再現ではない。
    真のジャックを選別するための競技場だ。

    豆の木は、ただ伸ばせばいいわけじゃない。
    誰かと繋げば速くなる。
    誰かに乗れば楽ができる。
    だが、繋がった瞬間――
    その木は、全員の命綱になる。

    そして命綱というものは、
    切るためにある。

    斧。
    たいまつ。

    冷静に考えてほしい。
    人が登っている木に、
    その二つを向けるゲームが、
    他にあるだろうか。

    ない。
    これはもう童話ではない。
    現場検証案件だ。

    燃やした側は笑う。
    切られた側も、次の瞬間には
    同じカードを引き、
    同じ目をする。

    ここでは、
    裏切りは戦術であり、正解であり、マナーですらある。

    怖いのは、巨人じゃない。
    人だ。

    このゲームが競わせていたのは、
    足の速さでも、運でもない。

    どれだけ躊躇なく、人を切れるか。

    豆の木より高く伸びるのは、疑念だ。
    そして今日もまた、どこかのテーブルで、
    新しいジャックが生まれている。

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  • 運だけじゃない。 バースト前提で考えるボードゲーム『SPOTS(スポッツ)』徹底レビュー

    運だけじゃない。 バースト前提で考えるボードゲーム『SPOTS(スポッツ)』徹底レビュー


    可愛い顔して、理性を削る。
    ダイスと犬のチキンレース『SPOTS(スポッツ)』完全レビュー

    アークライトから日本語版が発売されたボードゲーム
    『SPOTS(スポッツ)』
    ダルメシアンのブチ模様をダイスに見立てる――
    その発想だけで、すでに心を掴みに来ている。

    本記事では、ゲームの概要とルール、実際のプレイ動画、
    そして遊んだ後に残った感情を、ナレーション風の感想としてまとめて紹介する。


    ゲーム概要

    • タイトル:SPOTS(スポッツ)
    • ジャンル:ダイス/プッシュ・ユア・ラック
    • プレイ人数:1〜4人
    • プレイ時間:約30分
    • 勝利条件:完成した犬カードを6匹集める

    犬。ダイス。運試し。
    見た目はファミリー向け。
    だが中身は、容赦なく胃にくる。


    ルール解説(要点)

    手番でできること

    自分の手番では、以下のどちらかを選択する。

    ① アクションタイルを選ぶ

    • タイルに書かれた数のダイスを振る
    • 出目を犬カードの空きマスに配置
    • 置けないダイスは「庭」に置く
    • 使用したアクションは裏返り、全て使うまで再使用不可

    ② 犬を完成させる

    • すべて埋まった犬カードを完成扱いにする
    • ダイスを取り除き、新しい犬カードを補充

    バースト(失敗)

    「庭」に置かれたダイスの合計が8以上になるとバースト。
    未完成の犬カードと庭のダイスはすべて失われ、手番は即終了となる。

    8。
    あまりにも低い数字。
    だからこそ、このゲームに安全圏は存在しない。

    骨チップ

    骨を1つ消費することで、任意の数のダイスを振り直すことができる。
    安心材料であり、最後の命綱でもある。


    プレイ動画


    感想

    ダルメシアンのブチが、ダイスに見えた。
    その一瞬のひらめきから、このゲームは生まれたのだろう。
    『SPOTS(スポッツ)』――発想だけで拍手したくなる、奇跡のボードゲームだ。

    見た目は可愛い。
    犬。ブチ模様。ころころ転がるダイス。
    だが、騙されてはいけない。
    このゲームの正体は、理性を削る選択の連続だ。

    運に全振り?
    確かに、ダイスは無慈悲だ。
    出る目は選べない。祈っても懇願しても、裏切る。
    だが、ここで終わらないのがスポッツの恐ろしさだ。

    プレイヤーは、アクションを選ぶ。
    何個振るか。どこまで踏み込むか。
    そして一度選んだアクションは、しばらく使えない。
    選択は、次の自分を縛る。

    さらに追い打ちをかけるのが、バーストの存在。
    庭に置いたダイスの合計が8以上で――全てが崩壊する。

    8。
    たった8だ。

    余裕なんてない。
    安全圏など存在しない。
    これは優しさではない。
    「壊れる前提で進め」という、冷酷な設計だ。

    だからこのゲームでは、
    バーストすらも戦略になる。
    踏み込むか、逃げるか。
    守るか、捨てるか。
    判断を誤れば、犬も、努力も、全部消える。

    それでも人は、もう一度ダイスを振る。
    欲しい目が、そこにある気がしてしまうからだ。

    そして気づけば、笑っている。
    叫んでいる。
    悶絶している。

    スポッツは、
    勝ち負け以上に「感情」を引きずり出すゲームだ。

    ゲームが終わったら、
    きっと誰かが言うだろう。
    「もう1回やろう」
    あるいは、
    「101匹わんちゃんでも観るか」

    そう、このゲームは
    本気で削って、最後にちゃんと緩む。
    そんな時間のためにある。

    可愛い皮をかぶった、チキンレース。
    理性と運の、殴り合い。

    『SPOTS(スポッツ)』は、
    心を軽くする休日にこそ遊びたい、
    とても意地悪で、とても優しいボードゲームだ。


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  • 城を建てるゲームではなかった。 『キャッスルコンボ』という、判断に支配される3×3

    城を建てるゲームではなかった。 『キャッスルコンボ』という、判断に支配される3×3


    ボードゲーム『キャッスルコンボ(Castle Combo)』レビュー
    ― シンプルなのに悩ましい、3×3の城づくりパズル ―

    The Game GalleryのHAL99さんによるレビュー動画をもとに、
    ボードゲーム『キャッスルコンボ(Castle Combo)』の魅力とルールを詳しくまとめました。

    ルールは軽い。
    でも、毎手番の選択がとにかく悩ましい。
    そんな「考える楽しさ」がぎゅっと詰まった一作です。

    ゲーム概要

    • タイトル:キャッスルコンボ(Castle Combo)
    • ジャンル:カードドラフト/タブロービルディング(配置型)
    • メーカー:Catch Up Games(※『ファラウェイ』と同じメーカー)
    • プレイ人数:複数人対応
    • プレイ時間:短時間・テンポ良し

    ゲームの目的

    場からカードを購入し、自分の前に
    3×3(合計9枚)のグリッドを作成。

    カード同士の配置・条件・シナジーを組み合わせ、
    最終的に最も多くの勝利点を獲得したプレイヤーが勝利します。

    詳細ルール解説

    『キャッスルコンボ』は、
    「購入制限」と「リソース管理」が大きな特徴のゲームです。

    ① ゲームの準備

    • 山札は2種類
      • 村カード(下段)
      • 城カード(上段)
    • 各山札からカードを公開し、マーケットを形成
    • 使者(コマ)を、上段(城)または下段(村)のどちらかに配置

    この「使者」が、購入制限のカギになります。

    ② 手番の流れ

    各プレイヤーは9手番行います。
    (=3×3が完成した時点でゲーム終了)

    A. カードの購入(または資金調達)

    手番では必ずカードを1枚受け取る必要があります。
    ただし、使者がいる列からしか選べません。

    ■ カードを購入する場合

    • カード左上のコスト(金貨)を支払う
    • カードを自分の3×3グリッドに配置(隣接必須)
    • 即時効果があれば発動(金貨・鍵など)
    • 使者の移動
      上矢印 → 次の手番プレイヤーは「城カードのみ」
      下矢印 → 次の手番プレイヤーは「村カードのみ」

    👉 自分の選択が、次の人の選択肢を縛るのが重要ポイント。

    ■ 資金調達をする場合

    • カードを裏向きで1枚受け取る
    • 即座に「6金」「鍵2つ」を獲得
    • 裏向きカードは能力・得点なし

    「今は耐える」「後半に賭ける」選択肢として非常に重要です。

    B. 鍵(Key)の使用

    • 列のリフレッシュ(カード総入れ替え)
    • 使者の移動(購入制限を無視)

    鍵は多く手に入りません。
    だからこそ、使いどころが極めて重要です。

    ③ 得点計算

    • 横一列のシンボル数
    • 特定タイプのカード数
    • お金の保有量 など

    すべてを合計し、最も点数が高いプレイヤーの勝利です。

    感想

    城を建てるゲーム――
    そう思って、箱を開けた。

    だが、違う。
    これは、城を「建てる」物語ではない。
    建てられるなら建てたい。
    だが『キャッスルコンボ』が描いているのは、
    金貨で人を雇い、配置し、使い切る物語だ。

    このゲームはカードゲームでありながら、手札がない。
    握って温めるカードも、後出しの切り札も、土壇場の奇跡も存在しない。

    あるのは、晒されたカードと、逃げ場のない選択肢だけ。

    金貨が尽きる。
    鍵が足りない。
    欲しいカードは、いつも“別の列”にある。

    ――そう、このゲームの主役はカードではない。従者だ。

    盤上を静かに、しかし確実に支配する存在。
    彼が立つ場所ひとつで、未来が切り分けられる。

    王は表に出てこない。
    私たちはまだ、王に会える身分ではない。

    鍵は万能ではない。
    だが、その一手が世界を変える。

    『キャッスルコンボ』は、
    軽そうな顔をした、判断のゲームだ。

    城とは、石ではない。
    選択の積み重ねによって、いつの間にか建っているものなのだ。

    紹介動画

    購入リンク

    キャッスルコンボ 日本語版(ボードゲームまとめ買いで最大15%オフクーポン対象)「対象期間:12/19 21:00~12/24 4:59」

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  • シンプル=優しい、ではない。 出せなきゃ終わりのカードゲーム『アップダウン』

    シンプル=優しい、ではない。 出せなきゃ終わりのカードゲーム『アップダウン』


    出せなきゃ即脱落。
    シンプルなのに胃が痛いカードゲーム
    『アップダウン(UP DOWN)』徹底紹介

    ご提示いただいた動画は、株式会社ビバリーから発売されているカードゲーム
    『アップダウン(UP DOWN)』の紹介動画です。

    ルールは驚くほどシンプル。
    それでいて、一手の判断ミスが即「脱落」につながる
    強烈なスリルを秘めた作品です。


    紹介動画


    ゲームの概要

    • タイトル:アップダウン(UP DOWN)
    • メーカー:株式会社ビバリー
    • ジャンル:数字カードゲーム/サバイバル系

    1〜100までの数字が書かれたカードを使い、
    順番にカードを出していき、最後まで生き残った人が勝ちという
    非常に分かりやすいルール。

    ただしこのゲーム、
    「出せなかったら、その瞬間に脱落」
    復活も救済もありません。


    詳しいルール

    基本の流れ

    自分の番では、直前に出されたカードに対して、
    以下のいずれかの条件を満たすカードを1枚出します。

    出せるカードの条件

    • 場の数字より大きい数字
      例:場が「11」→「25」「42」「98」
    • 1の位が同じ数字
      例:場が「65」→「25」「45」「85」

    アクション

    カードを出したら、山札から1枚補充します。

    勝敗条件

    • 脱落:出せるカードがなければ即脱落
    • 勝利:最後まで生き残った人の勝ち

    特殊カード(効果カード)

    • パス:自分の番をスキップ
    • リバース:手番の向きを逆にする
    • ショット:次の手番の人を指名

    感想

    カードを出せるか、出せないか。
    このゲームにある判断は、それだけだ。
    選択肢は少ない。だが、結果は重い。

    数字を扱うゲームだと聞けば、
    人はつい「計算」や「戦略」を思い浮かべる。
    だが『アップダウン』が要求してくるのは、
    冷静な思考ではない。
    運。純度100%の運。

    引いた瞬間に、運命はほぼ決まる。
    良い手札は生かされ、
    悪い手札は、容赦なく切り捨てられる。
    ここには救済も、リトライもない。
    出せなければ、その場で終わり。

    見た目はどうだ。
    カラフルで、ポップで、軽やか。
    だが、その内側にあるのは、
    笑顔で隠された処刑装置だ。

    シンプルであることは、優しさじゃない。
    むしろ逆だ。
    余計なルールがない分、
    すべての責任はプレイヤーに返ってくる。

    どのカードを温存するのか。
    どの数字を捨て、どの可能性に賭けるのか。
    そして、特殊カードを「いつ」「誰に」使うのか。
    一枚出すごとに、
    場の空気は確実に張り詰めていく。

    カードを出す音。
    山札を引く一瞬の沈黙。
    そのわずかな間に、
    プレイヤーの心理は極限まで削られる。

    このゲームは、
    プレイしている人間よりも、場の空気を壊すのがうまい。

    だからこそ、雰囲気すら欲しくなる。
    明るい照明はいらない。
    薄暗くていい。
    会話も最低限でいい。
    必要なのは、
    カードが擦れる音と、誰かの小さな息遣いだけだ。

    年末におすすめか、と聞かれたら。
    答えは「YES」だろう。
    誰でも遊べる。
    説明は短く、盛り上がりは早い。

    だが、付け加えるなら――
    本気の大人が、本気でやること。

    それが、このゲームを
    ただのパーティーゲームから、
    記憶に残る“体験”へと変える。

    『アップダウン』は、
    数字のゲームじゃない。
    これは、
    運と覚悟を試される、生存確認テストだ。


    商品情報・購入リンク

    アップダウン ハイアンドロー TRA-094  ビバリー

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  • トリックテイキングが嫌いな私が、前のめりになった理由 ──『FIXER(フィクサー)』レビュー

    トリックテイキングが嫌いな私が、前のめりになった理由 ──『FIXER(フィクサー)』レビュー


    勝つために負けろ。情報で刺せ。
    ──ボードゲーム『FIXER(フィクサー)』レビュー

    The Game Gallery の HAL99 さんによるレビュー動画で紹介された、
    対戦型カードゲーム 『FIXER(フィクサー)』プロトタイプ版
    マストフォローと色の相性(3すくみ)を組み合わせた、
    心理戦と駆け引きが濃密に絡み合う一作だ。


    ゲーム概要

    • ジャンル:対戦型カードゲーム(トリックテイキング+陣取り)
    • プレイ人数:3~4人
    • 特徴:負けることでカードと情報を得る逆転構造
    • 雰囲気:ノワール調の渋いアートワーク

    両隣のプレイヤーと同時にカードを出し合い、
    「同色=数字勝負」「異色=相性 or 先手有利」という
    複数の勝利条件が絡み合う。


    ルール要点まとめ

    ■ マストフォロー

    すでに相手のカードがある場所にカードを出す場合、
    同じ色を持っていれば必ずその色を出さなければならない。

    ■ 勝敗判定

    • 同色:数字が大きい方が勝利
    • 弱点関係:弱点色を突かれた側が即敗北(高得点)
    • 相性なし:先に出した先手が勝利

    ■ 勝敗後の処理

    勝者は相手のカードを得点化。
    敗者は勝者のカードを受け取り、手札に加えるか捨てるかを選ぶ。


    感想

    正直に言おう。
    私は――トリックテイキングが苦手だ。

    マストフォロー。
    出された色に従え、逆らうな。
    そのルールはいつも、私から「選ぶ自由」を奪ってきた。
    出したいカードではなく、
    出さされるカードを握らされている感覚。
    自分でプレイしているはずなのに、
    どこか操られているような、あの息苦しさ。

    だから、FIXERも最初は警戒していた。
    また同じかもしれない、と。

    ――だが、違った。

    確かにマストフォローではある。
    だが、このゲームで“勝った側”が得るのは、
    相手の強さではない。
    弱さだ。

    負けた側のカード。
    つまり、価値の低いはずのカードが、
    勝者の手に回る。
    この瞬間、常識がひっくり返る。

    「勝つ=奪う」ではない。
    「負ける=次の刃を仕込む」。
    ここに、明確な戦略が生まれる。

    さらに色の相性。
    数字では明らかに弱いカードが、
    相性ひとつで――
    一撃必殺の高得点に化ける。

    弱いカードで、致命傷を与える。
    この背徳感。
    この快感。

    FIXERは、
    トリックテイキングでありながら、
    トリックテイキングの“正攻法”を裏切ってくる。

    マストフォローで勝つのではない。
    マストフォローの外側で勝敗が決まっていく。

    読み合いは、盤面だけじゃない。
    誰が何色を失ったか。
    誰がどのカードを回収したか。
    情報が、静かに、しかし確実に積み上がっていく。

    ちなみに、
    色の強弱関係が存在しない場合――
    勝つのは先手。

    ただ先に出した、
    それだけで勝ちになる局面がある。
    順番が、意志になる。
    テンポが、そのまま暴力になる。

    このルールがまた、いやらしくて、最高だ。

    そして、デザイン。
    派手さはない。
    だが、渋い。
    重い。
    空気が黒い。

    カードを出すたび、
    「見られている」感覚がある。
    一手が、性格を暴く。
    迷いが、次の標的になる。

    これは万人向けじゃない。
    軽く遊ぶゲームでもない。

    完全に、玄人好み。

    トリックテイキングが苦手な私が、
    それでも前のめりになった。
    それが、このゲームの何よりの証拠だ。

    FIXERは、
    ルールで縛り、
    情報で締め上げ、
    最後は心理で息の根を止めに来る。

    ――静かで、残酷で、
    そして、やたらと美しいゲームだった。


    紹介動画(HAL99|The Game Gallery)


    購入

    FIXER(フィクサー)

    価格:2420円
    (2025/12/17 12:28時点)
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